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埼玉近代美術館でライブやるなんてアメリカみたいだ

 メンバーでお泊り会やろーぜー。という本気なんだか冗談なんだか分からない提案が実現して陽君の家へ泊まりに行く。陽君の家へ行くのは初めてだったんだけど、子供の頃遊びに行った友達の家みたいな立派なマンションで、陽君凄い!と思う。
 友達の家に泊まりに行く事も少なくなったけど、たまに行くとみんな良いとこに住んでる。俺も洗濯機を家の中に置ける部屋に住みたいな。
 陽君が振舞ってくれた鍋を食べながら、くだらない話をしたりバンドの話をしたり、酔って寝たりまた起きて飲み直したり、ようするにいつも通りの流れをいつもより長い時間の中で繰り返す。いつものように楽しい。お風呂もいただき、布団も借りる。なんて居心地が良いのだ。
 翌朝は九時に起きて支度。今日は埼玉近代美術館でライブ。「BETTER NEVER THAN LATE」展という、友達の作品が中心となった展示が全国を回って、最後に埼玉近代美術館まで来たのだ。すげーぜみんな。その最終日に美術館でライブをやることになったのだ。すげーぜ。
 ハードコアバンドというとライブハウスでばかり演奏しているイメージがあるが、実際はライブハウスだけでは無くて実にいろいろな場所でライブをやる。そこがハードコアの醍醐味(の一つ)でもあり、そこには「やらないよりやった方がいいよね(BETTER NEVER THAN LATE)」という精神が根付いている訳だけど、その意識はバンドに関係無く友達全員が共通して持っているものであり、そういう共通している気持ちを言葉にして企画名とするセンスがまた格好良い。
 が、いつもと違う場所でやるといつもと違う問題が出てくるのも常であり、今回もうるさい音に対して美術館側が難色を示しているというのを聞かされる。うーん、「節電だけど爆音で」を信条にしているブレックファストにとって、それは大問題ですねー。とりあえずリハやろうぜ。
 リハを始めた瞬間に美術館側から注意されて音を下げる。爆音は信条だけど、その日のライブに関わった人全てが楽しく過ごせるように。というのもまたブレックファストの信条なので素直に音を下げる。
 防音対策がほぼされていない教室みたいな会場のすぐ隣では、「アンリ・ル・シダネル展」という印象派の展示が行われているので、音の苦情は仕方ないと思う。俺だって印象派の画家の絵を見ているときに流れる音楽は静かな方が良い。薔薇と月夜を愛した画家、アンリ・ル・シダネル。薔薇と月夜とブレックファスト。
 リハ後に今回の企画者の一人、FOLKLOREタクくんがチェックしていたという餃子屋へ、タク君とケミー君とアディダスの加瀬さんと四人で行ってみる。王将に北浦和のローカルテイストを加えたようなお店で美味い。店内の雰囲気といい、働いている女性たちといい(店員は全員女性であった)、学食っぽくもありそれがまた良いのだが、雰囲気と空腹に押されてつい食べ過ぎる。ライブの最中まで俺は餃子臭かったと思う。最前列の方々すみません。
 そんな事しているうちに始まったライブだけど、今日出演した全ての方々は本当に素晴らしかった!心音を増幅させてリズムとする山川冬樹さんのライブはまるでなにかの実験、もしくは魔法の手順のようで、リズムに同化しすぎると聞いていて心臓が締め付けられる錯覚に陥る。続くTHE LEFTYのトラックと言葉と照射される映像が渾然一体となって俺の意識を現実に立っている場所から運び去り、そこに加わる伊藤篤宏さんのさんの蛍光灯が創成期の雷鳴のように光り輝く。そこに加わる爆音がまた凄いぜと思っていたら、演奏がすでにブレックファストとなっていたので我に返って参加。俺も負けないように精一杯表現しようとした結果、一人芝居っぽくなったような気がするけどそれはそれで良い。楽しかったから。
 が、トークは失敗。最近のトークはよく失敗する。以前に比べて俺の意識が演奏に混ざり合い過ぎていて、喋ろうと思っても上手く演奏から気持ちが戻って来られないのだ。喋りたかった事は以下の通り。

 昨日、自転車に付けるライトを買いたくてお店へ行ったんだけれど、欲しいと思えるライトが無くて、悩んだ挙句買わずにお店を出た。帰りに通った表参道付近がかなり混雑していたので何かと思ったら、クリスマス時期恒例のイルミネーションが点灯されていて、木を装飾している数多の光がビルやら路面やらそこを歩く人やら車といった全ての物を白く照らしていた。俺がさっき悩んだ挙句に買わなかったLEDライトが、そこには何万個という数で輝いていて、その圧倒的な数のライトのたった一つを悩んでいる(しかも買わなかった)俺は何て矮小な存在なのだと落ち込んだ。
 そんな矮小で個人的な考えをいつもハードコアのリズムに乗せて叫んでいるんだけれど、それをいつもと違う状況で、しかも美術館という、今までやってきた中でもかなり特殊な状況でやることは、我々がやってきた事を別の視点から観察し、多角的に認識することに通じると思う。自分がやっている事の検証、確認を様々な角度から行い、次の目標を定める。我々はそれをずっと繰り返しているのです。
 今回展示された作品、今日出演された方々は本当に素晴らしかった。素晴らしい企画です。誘ってくれてありがとうございました!

 ということをもっとグズグズとしゃべる。格好よく喋りたかったなー。でもとても楽しくライブをする。リハの時に怒っていた学芸員の方々も(盛り上がって)見てくださっていたとか。なんともありがたく嬉しいことだ。
 夕方終わって打ち上げでポテトを食べまくる。ファミレスの入り口前にたむろしているギャルのようなヤンママのような、なんだかよく分からない三人の女性が妙に印象に残る北浦和駅前は冷たい冬の風が吹くのであった。


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